第11回ワークショップ議事録
日時:2007年4月14日 午後15時40分〜
場所:茨木市男女共生センター ローズWAM
テーマ:メソッド(1) 文法訳読法について
参加者:16名
司会:柿原武史
I. 開会の辞
II. Mini-charla
担当:江澤 照美
担当者自身の経験を交えながら以下のような見解を述べた。
1.日本ではノンネイティブの第二外国語教師の多くが教授法に対して関心が低かったり、あまり教授法を意識することなく教授活動をしている
2. 日本の第二外国語教育の現状では「文法訳読法」によって語学の授業を円滑に進めることが困難である
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<1.について>
日本の第二外国語教育において多くの日本人教師が文法訳読法を主な教授法として採用していると言われている。しかし、そもそも教授法についてレクチャーを受けた経験のある教師、すなわち教授法そのものに対する知識を持つ教師は果たしてどのくらいいるだろうか?
日本語教育の世界に目を向けると、日本語教師にとって教授法に関する知識は当然身につけねばならないものである。日本語教師のための検定試験である「日本語教育検定試験」の出題範囲(http://www.jees.or.jp/jltct/range.htm)を見ると、ある言語をその言語のノンネイティブ学習者に教える語学教師が持つべき知識やスキルの概要が把握できる。
特定の教授法によって授業を進めているというよりは、自分が教わった先生の授業の進め方に何らかの影響を受けて、そのやり方を模倣したり、多少の改良を加えている教師が少なくないのではないか。
<文法訳読法による授業とは?>
(1) 初級文法
担当者が教師役となり、他の参加者を受講者に見立ててミニ模擬授業を実施。
受講生を指名して、音読させたのち、訳読をさせる などの活動をした。
文法シラバスによる典型的な初級スペイン語の授業の中でおこなわれる各活動について補足説明した。
(2) 講読の授業
時間の関係で模擬授業は省略。
日本人が編集した初級スペイン語のテキストに収録された講読用生教材には初級文法
修了程度のレベルの学習者には難易度が高すぎるものがあることを具体例を示して指摘。
学生に訳させたあと、教師が訳し直すというパターンだと、教師の訳が唯一の正解というふうに解釈される可能性がある。
<2.について>
文法訳読法の最終的な目的は辞書の助けを借りながら、ある程度の難易度を持つ原書を読みこなすことである。文法知識はあくまでも講読のための手段である。
しかし、近年、教育事情が変化し、第二外国語としてのスペイン語教育では一年間で初級文法を終えることが難しくなっている。つまり、一年ないしは二年間のうちに生教材の講読をおこなうという目標段階にまで到達しにくくなっている。
文法訳読法は、コミュニカティブ活動を重視する傾向が見られる現在の日本の外国語教育においては何かと批判を受けがちな教授法であるが、その定義をあらためて確認すると、長所・短所どちらも持つという意味では他の教授法と変わりがないことがわかる。しかし、仮に部分的にでもこの教授法を取り入れる場合、教師が準備するのに楽だからという理由ではなく、この教授法の利点を積極的に活かす授業運営を考えるべきであろう。
<補足>
文法訳読法の長所・短所については日本語教育の概説書を参照。そのうち、担当者にとって特に参考になったのは田中望(1988)『日本語教育の方法 --- コースデザインの実際 --- 』(大修館書店)である。また、ネイティブのスペイン語教育専門家の目から見た日本のスペイン語教育事情については、Taciana, Fisac (2000) "La enseñanza del español en Asia Oriental" en El español en el mundo , Anuario del Instituto Cervantes 2000 やRey Marcos, Felisa (2000) La enseñanza de idiomas en Japón, 行路社 を参照した。
III. ディスカッション
文法訳読法についての事例(フィクション)を元にグループでディスカッションを行った。
各グループのディスカッション内容はこちら