第7回ワークショップ議事録 1

日時: 2006年11月11日 土曜日 午後4時〜

場所: 大阪産業大学梅田サテライト教室

テーマ: 教材(1)

参加者:13名

司会: 柿原 武史

 

 I..開会の挨拶

 

II. mini Charla 担当:溝田のぞみ  「教科書の使用例および感想」

コミュニケーション習得を目的とする初級授業において使用している一冊の教科書を取り上げ、まず使用環境、教科書の構成、その教科書を使って実践している授業スタイルを紹介1)。つぎに教科書の良い点と使いづらいと感じている点、使いづらさを補うため発表者が行っている工夫を述べた2)。最後に、ドイツ語の授業で使われている同種の(コミュニケーション系の)教科書を取り上げ、興味深いと思われるいくつかの点を紹介した3)。

 

1)授業スタイル:

 

@課のおおまかなテーマ説明

A語彙と表現の説明

表現1:説明→読み→パターン・プラクティス→教科書の練習問題(ペアで)

              ※上記を表現ごとに繰り返す

B表現カード

オモテに習った表現を1つ、ウラにその意味を書く

オモテが疑問文の場合、ウラに代表的な答えも1つだけ書く         

C本文の説明と読み練習

D表現カードを使った練習

E各課の小テスト(次週返却、授業のはじめに小テストで復習)

             +

適宜:別教材を使った聞き取り練習など...

 

2)教科書の使用感と使いづらさを緩和するための工夫

 

■良い点

 

@正誤問題ばかりでなく、自分について表現することを促すような問題がわりとある

A何度も同じ動詞を使った表現が出てくるので、復習となり、定着につながる

Bひとつの表現に対する関連語彙が比較的豊富に用意されている

C本文に日本語訳がついているので、説明に時間を取られない

 

■使いづらい点

 

@本文が長く、難しい

A本文と表現説明部分の内容が、うまくリンクしていないことがある

B表現説明部分のレイアウトが字が詰まりすぎていて見づらい

Cイラストが少なく、あっても有効な使われ方をしていない

Dカセットしかない

E練習問題が微妙に複雑で学生が取り組みにくい場合がある

 

■工夫している点

 

@キーセンテンスは必ず大きく板書しなおしてから、文の構造を説明する

A学生が練習しやすいよう、動詞活用とその関連語彙の補助プリントを作成

B内容にリンクするイラストや写真、教材等があったときは、コピーして配布

C表現カードを使って、キーセンテンスを印象づける

D他の教科書で同様の内容が扱われている箇所を探して、聞き取り練習をさせる

 

3)あるドイツ語教科書にみる工夫

 

@     基本文が短く、シンプル

A     聞き取り練習が豊富。CDのトラックが小まめに設定されている

B     イラストが単なる挿絵に留まらず、積極的かつ合理的に使用されている

C     ドイツ文化についても学べるような面白いアクティビティが用意されている

D     文法や語彙説明がすぐ横にある

 

7回ワークショップ議事録 2

III. 報告 「使用教科書の使いやすい点・使いにくい点・使用上の工夫」

 

) 報告者:柿原武史

 

使いやすい点・よい点

・文法事項の説明がコンパクトにまとまっている。

・古典的だが、文法事項が網羅されている。

・別冊で練習問題が豊富に用意されている。

・文法説明や解説が簡潔。教員がしゃべりやすい。

・例文に日本語訳がなく、学生に予習をさせて当てやすい。

 

使いにくい点・好ましくない点

TEMAが面白くない。会話形式だが内容が会話にふさわしくない。

・文法説明が少なく、自習、予習しにくい。

・辞書がないと使えない。

 

2)報告者:中川マルガリータ

 

Las virtudes dellibro:

Está actualizado. Se puede utilizar el contenido para hablar sobre temas actuales.

Es a colores.

Cuenta con ilustraciones de distintos países.

Los diálogos no son artificiales.

Tiene mucho contenido por lo que resulta económico: adaptando el nivel de dificultad se puede usar tanto en primer año como en segundo.

Cuenta con explicaciones gramaticales.

 

 

Los defectos dellibro:

Es muy denso: se corre el riesgo de que se dedique mucho tiempo a la lectura.

El orden de dificultad no está graduado. La primera unidad puede resultar más difícil que la segunda, la décima más fácil que la octava, etc.

Aparecen como léxico de Hispanoamérica palabras que en realidad no se usan en los países que se indican.

 

 

Lo que se hace para superar los defectos:

Con respecto a la densidad, se seleccionan las partes que se usan en clase, no se cubre todo. Cabe señalar, que el hecho de ser denso también es bueno, porque da opciones al profesor y se puede adaptar a distintos niveles de dificultad.

En lo que se refiere al orden de dificultad, en la medida de lo posible, se cambia el orden de presentación.

 

 

 

3)報告者:小川雅美

 

教科書の概要

  構成 160ページ。15課構成。1課8ページ。5課ごとに復習

コミュニカティブ・アプローチ

 

 

使用環境

・非専攻2年生(学力が高いと言われる大学。1年次で接続法まで文法を習っている)

・週1コマ (学生は週2コマを選択)

・クラスサイズ:10人前後

 

使い勝手のよい点

・量がちょうどよい(多くの洋書は半分も進めない)

・体裁がよい(字の大きさ、スペース、写真、絵)

actividadで構成されているが、一部省略してもあまり支障がない

・本文中の文法事項がコンパクトでわかりやすい。

・内容がリアルで標準的なスペイン語。文章表現が明快で読解にも好適。

actividadの種類が豊富で、分量が多すぎない(時間的に適当)

 

使いにくい点

・日本語話者の初心者がこの教科書だけでスペイン語を学ぶのは無理だろう。

・音声のスピードがあまりにも速い。日常会話そのものに近いので、かなり聞き込まないと内容がつかみにくい。

・人種的偏見が混じっている気もする。(アメリカ地域についての記述など)

・為替変動によって価格が大幅に上昇。このことは教科書の採用に直接影響する。

 

利用法

・授業を効率的に進めるためには日本語を使わざるを得ない。

・聴解は、多少ヒントを入れながらやっている。

・スペインの事情については、都度補足説明をしている。人種的偏見に関わるような表現については、偏見についての事実を、教科書とは離れた講師独自の見解も交えて伝えている。

・試験は、この教科書に適した試験形式にした。場合に応じて正しく適切なコミュニケーションができるかどうか試すもの。ロールプレイも取り入れた。

・本全部をすることより、個人のコミュニケーション力の向上を重視した授業をこころがけている。

 

4)報告者:糸魚川 美樹

 

今回報告する教科書とその改訂版は、名古屋大学共通教育の「スペイン語」用の教科書として作成されました。全18課構成で半期6課すすみ、週21年半で終了することを予定し作成されました。しかし、2年後名古屋大学のカリキュラム改正により、共通科目としての外国語履修が1年生のみ(週2回)となり、全16課に減らした改訂版を作成しました。現在名大では、半期8課ですすめています。文法項目を減らし、4課ごとをまとめた「総合問題」を追加しました。

  作成者本人が「使いやすい点」「使いにくい点」をあげるのは客観性に欠けるので、この機会に学生にアンケートをとってみました。もっとも興味深かったのは、「説明が少なく、予習ができない」という意見が多くあったことです。作成段階で出版社から、説明はできるだけ削るよう再三言われ、かなり削除しました が、実は学生のニーズに合っていないということがわかりました。

 

5)報告者:磯野吉美

 

使用環境

・副専攻(第二外国語) クラス規模:3540名 

・ペア授業(各講師週一回) 

・期末共通試験  

  前期学習範囲:1課〜10課(文法プラスアルファ含む)

  後期学習範囲:11課〜20課(文法プラスアルファ含む)

・教科書構成:各課:会話文→文法説明→練習問題

・会話文:日本人留学生ミカのスペインでのキャンパスライフ

 

 

良い点

・バランスが取れている:点過去・線過去が前期学習範囲に含まれている。→「学生の負担が軽減する」と、教科書選択の理由として専任教師から説明される

・会話文:自然(ただし日本語に訳しにくいものもあると、小川氏がタデスカにて指摘)

   CD:効果音による臨場感あり

   登場人物一人ずつ異なるネイティブが担当し録音。  

 

  各行に番号がふってあるので見やすい。

・文法説明の中の例文:会話文から抜き出し。練習問題も同様の文→同様の例文を繰り返すことで定着率が高まる。

・関係詞、副詞の最上級なども紹介。

・とりあえず、接続法過去までざっと知ることが出来る。

・動詞活用:文法ページで例を一覧表で示した後、会話文に出てくる動詞の活用を虫食いの形で埋める欄あり→最近の学生はノートをとらずテキストに書き込むということに対する配慮だと考えられる。

・過去が教科書前半で紹介されるので、「天候表現」などで現在形の文と比較しながら学べる。

・練習問題:「スペイン語で答えましょう」は、口頭練習にも使用できる。

・教授用資料に各課小テスト付。

 

 

使いにくい点及び使用するにあたっての工夫

・「薄い本にも拘らず、接続法過去まで扱う」という点で文法説明時の例文が不足しているように思える。

・文法説明の為に、例文を板書で追加:使用する語彙は教科書で紹介されているものを使用。

・場合によっては別紙プリントを配布。

 

 

まとめ

・他のテキストと比較し語彙(特に動詞)が少ないように思えるが、「これだけで、ここまでのことが表現できる」ということを学生は実感できるのではないか?

CD付で2,000円:安い。

 

6)報告者:小山朋子

使いやすい点

・説明が細かく丁寧。文法事項は網羅。

・例文に訳がついているので、動詞や動詞句の使用例の説明がしやすい。

・ペアの会話練習で使える素材が多い。カラーの絵が楽しい。猫の位置表現、冷蔵庫の中、服の色、開始・終了時刻など

 

 

使いにくい点

・時に説明が多すぎる。練習問題に難しいものがある。

・各課最初の会話文が長く難しい。

usted両方に「あなた」という訳語がつけてある。

・形容詞の例にgordoが使われていて、「太っている」という言葉を連呼せざるをえない。

使用するにあたって、どのような工夫をしているか 

・ペアで着席させて、絵・素材を生かして会話練習をさせる。

・その課を終える時に、最初の会話文の訳を配り、CDで会話を聞かせる。その課で習った文法事項の使用例としてポイントとなる箇所だけ抜き出し説明し、まとめとする。

・学生のレベルに応じて難しい文法事項は省略する。

 

どこで使っているか?

・昨年度(S大学) 選択必修。週2回。後期は自由選択科目 1〜4回生

 

 学生の学力は最低レベルなので、必要事項だけピックアップ。細かい文法説明はせず、会話練習を主とし、フレーズで覚えさせた。→あまりに省く箇所が多いのはよくないと判断し、今年度は補助教材として使用。

・今年度(R大学) 選択必修。2回生。テキスト指定(1回生からの続き)。シラバス共通。

 

書いてあることを全部教えようとして、目的格人称代名詞で苦労する。