第5回ワークショップ議事録
日時: 2006年9月11日 月曜日 午後4時〜
場所: 大阪産業大学梅田サテライト教室
テーマ: クラス内での学力差(1)
参加者:16名
司会: 柿原 武史
I.開会の挨拶
II. mini-charla 担当:安藤 幸治 「どこまで、どのように教えるか? 〜学力差と地域差」
・問題: スペイン語を専門にしている(または理解度の高い)学生と、そうでない(第二外国語として、または理解度の低い)学生
a)前者は一通り教科書に出てくる文法事項を身につければ、問題なし(地域差についても対応できる?)
b) 後者には特定の分野や地域にのみ関心を持って、スペイン語学習に取り組んでいる者もいる。この場合どこまで教えればよいか?
・状況
a) 学生からの質問、要望、意見
・スペイン語が話せるようになりたい。
・ イベリア半島のスペイン語とアメリカ大陸のスペイン語は違う?
・スペインのスペイン語はアメリカ大陸で通じる? またその
b) 教える側(または大学)の考え方
・スペインの標準スペイン語に統一。
・ある程度は地域差についても説明する。
ある程度とはどの程度か?
地域差について説明すると混乱の原因となる?
・結び 学生にとっては覚える事項が少ないほうが学びやすいが、学生の学力を考慮したうえで、多少の地域差は説明する必要がある。
III. グループディスカッション
クラス内での学力差と問題点→解決策は?
《グループA》
1)学力差に起因すると思われる、授業実践上の問題(事実)
・指名された学生が答えられず沈黙してしまうので、その対処のために授業を先に進めにくい。
・学力の低い学生に合わせて進むと、学力の高い学生に迷惑となる
学力の高い学生には「復習になるのでかまわない」と言う者も多い
一方で、退屈する学生もいる
学力の高い学生の力をより高めるような授業がしづらい
・2年生になるとクラス内の学力差がより顕著になり、問題が増幅される
1年次で習った基礎事項を忘れている学生もいる
会話クラスでは、それまでの学習歴(どんな授業で習ったか、留学の有無な
ど)によって会話力が顕著となり、力のない学生が心理的に圧迫されて授業
や会話に対してネガティブな態度になっていく
2)現場での対応と問題の所在
・授業全体の進度を、学力の低いレベルに合わせながら進めようとする方針を取っている
・その上で、個々の学生の状態に注意し、個別に対応している
・授業中に作業をさせている間教師が机間巡視すると、学生が質問しやすい
・小テストの結果がよくない学生に、再テストを実施したり、授業後個別に話をしたりすることで、学力の低い学生のフォローをする
・文法事項や語彙だけで学力を評価しないよう、授業の目的を言語形式だけにしばらないようにする
・個別の対応で問題がある程度解決される場合とされない場合がある。制度的な要因で、個別対応に限界が生じる
・1クラスの人数が多いと学生の学力を個々に把握することは困難
・大学が、授業や評価について、個々の講師に任せている場合は柔軟に対応できるが、教科書、進度、さら
にはテストの内容も大学(一般的には専任の先生)がコントロールしている場合は、学生たちの現実的な理
解力に対応しにくい
大学の入試制度により、極端に学力の低い学生がいる場合があるが、大学が対処法を提示しないので、
教師個人の問題として捉えかねられない
《グループB》
事例1
・第2外国語にもかかわらず、専任教員の意向で専攻並みに進む大学。(進度が早すぎる)
・ペア授業で週2回。
・前期で線過去まで、後期で接続法まで終わらせる。
・クラス内の3%は専攻の学生並みによくできるが、残りは苦労。
・平均点は100点満点中50点〜60点。
・3分の1は落第。
課題:「わかった」と実感できる練習問題の提供。
・それほど第2外国語教育に力を入れていない(?)大学。
・週2回
・前期は不規則活用動詞の現在形まで。
・後期は過去形を中心に。
・後期は希望者のみが履修。
・文法理解に困難を感じるため、フレーズを覚えさせ、口頭で暗誦試験。
事例3
・それほど第2外国語教育に力を入れていない(?)大学(その2)
・週1回。
・前期は教科書の第4課(規則活用の現在)まで。後期は第6課(若干の不規則活用動詞の現在形と所有形容詞(代名詞)、指示詞、目的格人称代名詞)まで。
課題:どうしようもなく外国語が苦手な学生(動詞と名詞の区別も付かない)への対応苦慮。
事例4
・外国語学部、た専攻学生向け第2外国語。
・自由選択。必修の学生もいる。(モチベーションの差)
・基本は週1回。必修の学生は週2回履修している。
・ロマンス諸語を専攻する学生と、それ以外の言語を専攻する学生との間に大きな
差。
・どちらにあわせるか対応に苦慮。
課題:週1回の授業で接続法まで行くことになっているが、困難。ロマンス語系言語以外を専攻する多くの学生が付いてこられなくなる。
事例報告後のディスカションで明らかになった点。共通する課題など。
1. 文法苦手な学生には、フレーズを覚えさせたり、発表させるとクラスがいきいきする。
2. できる学生は勝手に勉強してくれる。(勉強の仕方を知っている。)
3. 反応が無いクラス。→退屈なのかどうかもわからない。
4. 大きな学力差がある学生がいる場合…できない学生のケアに重点を置く→進度が遅くなり、沈滞ムード→クラスの雰囲気悪化。
解決策:
興味あり、よくできる学生に合わせないと、彼らが退屈。→ある程度の線引きが必要という意見。
⇔そうすると、できない学生が「先生は出来る子だけが好きなんだ」と思い、更にモチベーションが下がって
しまうという意見も。
5. ネイティブによる会話のクラス。…会話を好むクラスと、受身的な学習好むクラスがある。→クラスのニーズに合わせた授業展開。
例)受身的な学習好むグループにはリスニング課題を中心に。
6. 練習問題を授業中にさせる場合→できない学生の近くに行って、指導をする。(その学生ができるのを待っていると、クラスが騒がしくなる。また、個別に対応すると時間がかかりすぎる。しかし、授業中に気にかけることは重要。)
《グループC》
問題点
・クラス内に明らかな学力差が存在→出来ない学生に合わせる→授業が進まない
・2年生:学力差拡大
・(非常勤)講師側と大学側のスタンスの違い
解決策
・モチベーションをあげることの重要性
・個別対応(教室を巡回し個人的に質問を受け付けるなど)
・クラス内のグループ分け(スペイン語ネイティブによる会話クラス)
モチベーションと成績別にグループ分けし、授業をグループごとに進める。 →よりスムーズな授業展開が可能
IV. 総括