文法訳読法(グループディスカッション)

グループ1

 

江澤先生のMini Charlaを受けて

 

(1)日本ではノンネイティブの第二外国語教師の多くが教授法に対して関心が低い,あるいはあまり意識せずに教授活動をしている

 

⇒とくにリレー式の場合は,教員間で指導方針や到達目標をあらかじめ確認しておく必要がある。相互の連絡はもちろんのこと,補足説明の詳細,欠席者の把握などの情報も共有することがのぞましい。

 

(2)日本の第二外国語教育の現状では「文法訳読法」によって語学の授業を円滑に進めることが困難である

 

⇒訳読は,文法の理解度を測る有効なメソッドである。例文の場合は「君は私に何本かの花を買う」とうような直訳でよく,不自然な日本語であっても教員は学生がcomprasを「君が買う」と理解するしていることが確認できる。「花を買ってくれる」とうような自然な日本語への訳は,会話文や講読教材のようにコンテクストが存在する場合に要求するほうがよいのではないか。「直訳」「自然な訳」「意訳」を段階的に指示するほうがよいのではないか。また,学生には自分の言葉で訳した文に自信を持たせることも大切であろう。

 

(3)文法説明について

 

     文法用語の説明については,高校英語の教授法のみならず高校の国語の教授法についても情報を得るべきではないか。

 

     長文訳読の際に必要な<,> <:> <;> < - - >などの記号の意味を説明することも必要である。作文の授業でも必要。

 

(4)予習について

 

     学生に強制力を持って授業の準備をさせるならば,「予習」ではなく「宿題」とすればよい。

 

     予習の方法に明確な支持が必要である。例)次回の範囲の最小限の文法を説明し,「次回には例文を訳し,不明な点を明確にしてきなさい」と指示して授業を終える。練習問題の宿題を出すときには一部を解いて残りを宿題にしたり,ポイントを授業内に解いて訳を宿題にして授業を終える。学生が自宅でテキストを開き,どこから手をつけてよいかわからないような状態に陥らないようにする工夫が必要。

 

グループ2

 

1.事例についてのコメント(=われわれが授業を行う上で気をつける点につながる)

 

1     学生Eが「先生のマヌエラは・・・・」と言った後、教師Bは「う〜ん」と言って、生徒が答えようとするのをさえぎっている。答えはとりあえず最後まで言わせたほうがよいのではないか。生徒のやる気を損なう恐れがある。

 

2     学生Dに対して、「『私に』はあってるけれど、誰が買うのかな?」という言葉について。「あってるけれど」と言うと、否定的なニュアンスを学生に与える。とりあえず、あっていることに関しては、『良いですね』などの肯定的なコメントをあげておくべきであろう。

 

3     寝ていた生徒を「ここぞとばかりに」指すのは良くない、というコメントが出たが、これに関してはほかに二つの意見が出た。

 

−寝ていたことをみなの前で注意して恥をかかせたりはしなかったので配慮がある。

 

−居眠りしていた生徒が起きた瞬間にいきなり指すのではなく、まず学生Eを指して、

 

     学生Dに対して猶予を与えているので、教師Bの配慮が感じられる。

 

4     教師Bは日本語訳にこだわっているが、はたして自然な日本語に訳す必要があるのか疑問である。しかも、教師Bは学生Dに対して、「動詞には主語の形が入っているから、主語も入れて訳したほうがいいですね」と指導し、学生がそのとおりにした後に、「『君は』という主語を訳すと不自然なので、『私に花を買ってくれる?』どうですか?」と修正している。矛盾した指導は学生を混乱させ、不信感を与えかねないので気をつける必要がある。

 

5     教師Bは、「unasを訳すと不自然になりますね」とだけ言い、ではどうするのがいいのかなど、フォローをしていない。

 

6     me comprasで、meが花屋だった場合については、学生を混乱させるだけなので、ここでは触れないほうで良いであろう。

 

7     目的格人称代名詞を学習する直前に主格人称代名詞を復習する必要があるだろうか。実際に、主語の復習をしてから目的格人称代名詞にはいったことのある教師は、そのクラスでは、yo gusta などの間違いが多かったとコメントした。

 

2.文法訳読法についてのコメント

 

1     学生が下を向いて一人で作業するのではなく、生徒と教師がやりとりをするのは良い。

 

2     しかし、一度に一人の学生しか当たらないため、ほかの学生が集中していなかったり、リラックスしてしまう危険がある。そのため、教師はパッと別の学生を当てたりすることで、他の学生を安心させないようにする工夫が必要である。一人の学生にかかりっきりになってはいけないし、そうかと言って、答えられない学生をすぐに飛ばして次の者を指すのも望ましくない。また、指すときに、難しい問題にはよくできる生徒を、易しい問題にはあまりできない生徒を当ててしまう場合があるが、それもあまりあからさまにやるべきではない。クラス全体を適度にコントロールする能力が教師に求められる。

 

3     文法用語を多用すると、それだけで学生が拒絶反応を示したり、難しいことをやっているのだと感じてしまう可能性がある。英語の文法を借用して説明したり、簡単な日本語にしたり、ジェスチャー(たとえば主格などの場合)を使用したりする工夫が必要であろう。

 

4     図式を示して、それをただ暗記せよ、という指導になりがちである。なぜそうなるのかという説明をしない場合が多い。

 

5     文法訳読法の場合、スペイン語を生産する作業がほとんどない。1年生の時には、まだ簡単なフレーズなどをスペインで話させることができるが、2年生になった時に、内容的によりレベルの高い授業をしようと思うと、どうしても文法訳読法になってします。

 

6     ビジュアル的に、あるいはオーラルメソッドで言語を学習することが得意な学生もいるであろう。そのような学生にとっては、文法訳読法は不向きかもしれない。

 

グループ3

 

 まず、参加者Aから「文法説明をしないで、予習をさせるんですか」という質問があり、それに対し参加者B が「学習者が予習の段階で完全に理解していて、訳に問題がなければ次に進むというのが本来の訳読法です」と返答した。また、参加者Cから「文法訳読法は学生の自習を促す方式で、教師がそれを確認するやり方」との説明があった。しかしながら、現今の大学教育では、上記のような訳読法はほとんど期待できない(学生が予習をしないため)ので、本来の訳読法にはなかった、括弧の穴埋めのような問題がテキストに登場するようになり、また、予習の段階で理解が完璧などということは現今では到底考えられないので、授業において文法を説明する必要が生じている(本来の訳読法ではあまりなされない)、との議論があった。

 

 

以下、議論された問題点を列挙する

 

 

 

・議論を踏まえたうえで、いまスペイン語の授業で使用されているようなテキスト、あるいは行われている指導法は、大学入学前の英語学習によって培われた知識をある程度前提にしている。(良いか悪いかは問わず)

 

・文法用語の導入法、用い方について検討する必要がある。

 

 

(事例のような授業について)

 

・例文を学生に訳させずに、教師が文法を説明するのに用いるのが良いのではないか。

 

 

・教えた内容を反復練習させるために、当該箇所の説明後すぐに練習問題にジャンプしてはどうか。

 

・事例作成者は自身は、シナリオのような授業方法を問題視している(確認)。

 

・(会話文の内容は訳させるかどうかについて)訳させる訳させないは、教材や学習者の資質によるが、「普通」の学習者は、全訳を知らないと安心できない傾向がある。

 

 

(文法訳読法の特徴や性格)

 

・学習者の人数が多い場合には、訳読法に頼らざるを得ない。

 

・勉強するコツを知っている学生には向いている。(予習を前提とするので)

 

・教師が目標言語のネイティブスピーカーではない。

 

・大学のように短期間のうちに、原書を読むレベルまで学生を引き上げようとするなら、必要である。

 

・教師にとっては楽な方法である。

 

・(以上を総括すると)良い悪いという問題ではなく、特定の学習者・特定の環境にとっては有効な教授法である。


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