特別教室での授業実践(4)
1.LL録音再生機能を用いたパターンドリル
1.1 オーディオリンガルメソッド(50年代、60年代に全盛)
構造主義言語学と行動主義心理学が結びつき、LL機材の開発とともに作られたメソッド
形式中心、スキル形成、誤りを認めない
→生成文法、認知文法、コミュニカティブアプローチから非難され衰退
LLはCALLに取って代わられてきている
Español 2000が唯一のLLカセット教材(全面改訂版準備中)
1.2 メソッドに対する非難にも関わらず使用している理由
授業科目と与えられた教室尊重
形式は、意味を正しく伝える手段として重要
発音や文法のスキル形成により、長期的には学習者の注意をより意味に向けやすくなるだろう
パソコンと異なり、聴覚に注意を集中しやすい
このメソッドは、新しい語学教育の観点を取り入れれば効果的だと考える
1.3 問題点
ディスコースを考えないので意味が把握しにくい / 文が不自然なものがある
機材の不調が頻繁 / 学生がカセットデッキを持っていない
この練習の趣旨を理解しない学生は形式の模倣のみに終始してしまう
1.4 使用方法
予習:授業中に新出文法事項の説明、わかりにくい語句の説明、発音のポイントの練習
家で、学生は当該課の文の意味を調べ、テープ、MDで練習(解答は教師が預かっている)
授業:1つの授業で1課。所要時間10分程度。各自がテープを操作し、録音。
復習:教師が(できる時は)学生の発音をチェック。個人、もしくはクラス全体に問題箇所のフィード
バックを行う。
当該課の構造を用いてペアで作文をさせるなどし、意味論的・語用論的な注意を喚起する
4課終了ごとに録音テスト(何も見ないで録音する)
★パターンドリルはどうしても機械的な授業になるため、残りの時間には会話、ビデオを用いた練習等をしている。
★LL機能のうち、学生同士のやりとりや、モニターなどは使用していない。教師がモニターに徹していると学生との距離ができてしまう。私はその機能の使用に習熟していないが、自分の授業ではそこまでの必要性を感じない。面と向かって話せばいいと思う。
2.学内パソコンシステムを用いた作文の添削
2.1 H大学のWEB教育支援システム(Hint)
2.2 2006年の実践例
作文:教科書の内容を応用し、学生自身の事柄について作文。Wordでスペイン語用の文字を出す方法を教える。
課題提出:学生の作文(Word文書)を教師のフォルダーに入れる、もしくはメールに書類を添付して教師に送る。
添削:教師はWordのコメント機能や色を用いて添削。メールで本人に送り返す。(スペイン語で簡単なメッセージをつける)
発音練習:完成した作文を教師が音読して音声ファイルを作り、それを学生に送信。学生は家で発音練習をする。
テスト:その作文を音読する。
2.3 考察
後期にパソコンを用いたのは効果的
・ モチベーションの高い少人数のクラスで、きめ細かい授業が出来た
・ パソコンの授業で習い覚えたことをスペイン語に応用したので相乗効果があった
・ クラスメートが互いに協力しながら作業ができた。
3.パソコン教室を利用した講義スタイルの授業
3.1 講義授業の実践例
資料準備:ワードで配布資料を作成・・・カッコ抜き、ハイパーリンク、画像を盛り込む
配布:Hintシステムで受講生に配布。学生はダウンロード。
授業:学生は、講義内容を聞いたり、ハイパーリンク先の資料を参照したりして、カッコに補充。
ハイパーリンク先のページを自由に閲覧することも。
必要に応じ、ビデオ、DVD、OHCを見せたり、お土産などの実物を回覧したりする。
出席チェックは、H大学授業支援システムで行う。
復習など:Hintシステムで選択解答方式の自己採点テストを作っている。
レポート(自由課題)はHint経由での提出も可能。
3.2 考察
良い点
・毎回配布資料をコピーする手間がなくなった。
・ カラーの画像や動画を学生に手軽に見せられるようになり、スペイン語圏文化をリアルに伝えられるようになった。
・ 多少インタラクティブな授業になった。
・ インターネットのスペイン語や英語の世界に学生を誘えた。
問題点
・ WEB上にあふれる情報の取捨選択に大変時間がかかった。
・ ハイパーリンクは常に更新・削除されているのでフォローが不可欠。
・教師も学生も画面とにらめっこの授業になりがち。
まとめ
1)LLは今後CALLに取って代わられるだろう。しかし、パターンドリルは改善され、他の方法と効果的に併用されるべし。そのような教材の開発が待たれる。
2)パソコンの知識があまりなくても、それなりに利用することは可能→使ってみよう!(小川 雅美)